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「親が認知症になったら銀行口座が使えなくなる」——そんな話を耳にしたことはありませんか?

実はこれは都市伝説ではなく、実際に起こり得る深刻な問題です。認知症によって判断能力が低下すると、銀行が口座の取引を制限し、不動産の売却もできなくなります。これを「資産凍結」と呼びます。

厚生労働省の推計では、2025年時点で65歳以上の約5人に1人にあたる約700万人が認知症になると予測されています。もはや「自分の親は大丈夫」とは言い切れない時代です。

この記事では、認知症による資産凍結の実態と、元気なうちに取れる3つの具体的な対策を解説します。

認知症による資産凍結の実態

認知症患者の保有する金融資産は、2030年には約215兆円に達すると試算されています(三井住友信託銀行・第一生命経済研究所)。

深刻な実態

認知症による資産凍結は、本人だけでなく家族の生活にも直接影響します。親の介護費用を親の預金から出せない、実家を売却して施設入居費用に充てられない——そうした事態が全国で起きています。

なぜ資産が「凍結」されるのか

日本の法律では、契約や取引には「意思能力」が必要とされています(民法第3条の2)。認知症によって判断能力が失われると、以下のことが法的にできなくなります。

  • 預金の引き出し・振込み
  • 定期預金の解約
  • 不動産の売却・賃貸・建替え
  • 株式・投資信託の売買
  • 保険の解約・変更
  • 遺言書の作成

つまり、認知症になった時点で「財産に関するほぼすべての行為」ができなくなる可能性があるのです。

凍結されるとどうなる?具体的な影響

家族が直面する5つの問題

問題 具体的な影響 深刻度
介護費用が出せない 親の預金から介護費を引き出せず、子が自腹で負担 ★★★★★
施設入居がしにくい 有料老人ホームの入居一時金(数百万円)を親の資産から出せない ★★★★★
実家が売れない 空き家のまま維持費・固定資産税だけがかかり続ける ★★★★☆
相続対策ができない 生前贈与・遺言作成・保険の加入変更がすべて不可能に ★★★★☆
家族間のトラブル 費用負担の偏りから兄弟間の不和に発展するケースも ★★★☆☆

銀行口座の凍結 — いつ・どのように起きるか

凍結のきっかけ

銀行が口座を凍結する主なきっかけは以下の通りです。

  1. 窓口での異変 — 本人が窓口で同じ話を繰り返す、手続きの理解ができない等
  2. 家族からの相談 — 「親が認知症なので代わりに引き出したい」と相談した場合
  3. ATMでの異常取引 — 不審な取引パターンが検知された場合
  4. キャッシュカードの暗証番号忘れ — 再発行手続きで本人確認ができない場合
知っておきたいポイント

銀行は「認知症の診断」がなくても、窓口で判断能力の低下が疑われた時点で取引を制限することがあります。つまり、「認知症と診断されたら凍結」ではなく「銀行が気づいた時点で凍結」されるのです。

凍結されたらどうなるか

  • 預金の引き出し・振込みが不可
  • 定期預金の解約が不可
  • ATMでもキャッシュカードが使えなくなるケースあり
  • 自動引き落とし(公共料金等)は継続されることが多い

凍結を解除するには、原則として成年後見制度を利用して裁判所に後見人を選任してもらう必要があります。これには2〜4ヶ月かかるうえ、後見人への報酬(月2〜6万円)が発生し続けます。

不動産の凍結 — 売れない・貸せない・建て替えられない

不動産の売買契約には所有者本人の意思能力が必須です。認知症で判断能力が低下すると、たとえ家族であっても不動産を処分できなくなります。

よくあるケース

実例

80代の母が認知症で施設に入所。月額25万円の施設費用を捻出するため、空き家となった実家(評価額2,500万円)を売却しようとしたが、母に意思能力がないため売買契約が締結できず。成年後見の申し立てに3ヶ月、さらに居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要で、結局売却完了まで8ヶ月を要した。その間の施設費用200万円は長男が自腹で立て替えた。

不動産凍結で発生するコスト

  • 固定資産税 — 空き家でも年間10〜30万円
  • 維持管理費 — 草刈り・防犯・修繕で年間5〜20万円
  • 特定空き家の指定リスク — 固定資産税が最大6倍に
  • 老朽化による資産価値の下落 — 年5〜10%ずつ減少

資産凍結を防ぐ3つの対策

資産凍結を防ぐには、親が元気なうちに行動することが絶対条件です。認知症の症状が出てからでは手遅れになります。

対策①:家族信託

家族信託(民事信託)は、親(委託者)が子(受託者)に財産の管理・処分を任せる契約です。親が認知症になっても、子が信託された財産を管理・活用できます。

仕組み

  • 委託者(親)→ 信託する財産を決める
  • 受託者(子)→ 財産を管理・運用する
  • 受益者(親自身)→ 財産から生じる利益を受ける

家族信託のメリット

  • 認知症になっても銀行口座の凍結を回避できる
  • 不動産の売却・建替え・賃貸が子の判断で可能
  • 成年後見制度より自由度が高く、柔軟な運用が可能
  • 裁判所の監督が不要で手続きが煩雑でない
  • 遺言の代わりにも使える(受益者連続型信託

家族信託のデメリット

  • 初期費用が50〜100万円と高い
  • 受託者(子)の管理負担が大きい
  • 身上監護(施設入所の契約・医療同意等)はカバーできない
  • 専門家(司法書士・弁護士)の支援が必要

費用の目安

項目 費用
専門家への報酬(コンサルティング+契約書作成) 30〜70万円
公正証書作成費用 3〜5万円
不動産の信託登記(登録免許税) 固定資産税評価額の0.3〜0.4%
合計 50〜100万円程度

家族信託の仕組み・手続きの詳細はこちら

家族信託の無料相談

家族信託の設計には専門知識が必要です。まずは無料相談で、ご家庭の状況に合った信託プランを専門家に相談してみましょう。オンライン相談に対応しているサービスも増えています。

対策②:任意後見制度

任意後見制度は、元気なうちに「将来、判断能力が低下したときに後見人になってほしい人」を自分で選んでおく制度です。

任意後見の仕組み

  1. 本人が元気なうちに任意後見契約を締結(公正証書で作成)
  2. 判断能力が低下したら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立て
  3. 監督人が選任されたら、任意後見人としての職務を開始

任意後見のメリット

  • 後見人を自分で選べる(家族信託と同様)
  • 身上監護(施設入所の契約・介護サービスの手配等)が可能
  • 法定後見より費用が安い(月1〜3万円+監督人費用)

任意後見のデメリット

  • 任意後見が発効するのは判断能力低下後(それまでは効力なし)
  • 裁判所による監督がある
  • 財産の積極的な運用(投資・不動産活用等)は制限される

成年後見制度(法定後見・任意後見)の詳細はこちら

対策③:銀行の代理人制度・予約型代理人サービス

一部の銀行では、認知症対策として独自のサービスを提供しています。

主な銀行サービス

銀行 サービス名 概要
三井住友銀行 SMBCファミリーワイド 事前登録で家族が代理で取引可能
三菱UFJ銀行 代理人カード・代理人届 家族を代理人として事前登録
みずほ銀行 代理人届 家族による代理取引が可能
ゆうちょ銀行 代理人届 家族が代理で取引(一部制限あり)

銀行代理人制度の注意点

  • 不動産には効果がない — 銀行口座のみの対策
  • 認知症が進行すると利用できない場合もある
  • 引き出し上限の制限があることが多い
  • 銀行によってサービス内容が大きく異なる
おすすめの組み合わせ

銀行の代理人制度だけでは不動産や保険をカバーできません。「家族信託+銀行の代理人登録」「任意後見+銀行の代理人登録」の組み合わせが安心です。

3つの対策を比較 — どれを選ぶべき?

項目 家族信託 任意後見 銀行代理人制度
対象資産 預金・不動産・株式等 すべての財産 銀行口座のみ
不動産の売却 ⭕ 可能 △ 裁判所の許可が必要 ❌ 不可
身上監護 ❌ 不可 ⭕ 可能 ❌ 不可
裁判所の監督 なし あり なし
初期費用 50〜100万円 10〜20万円 無料〜数千円
継続費用 なし(信託報酬を設定した場合を除く) 月2〜5万円 なし
おすすめケース 不動産がある家庭 身上監護も必要な場合 まず手軽に始めたい場合
筆者の見解

不動産を持つ家庭なら家族信託が最も効果的です。初期費用は高いですが、成年後見制度の継続費用(年間24〜72万円 × 数年〜10年以上)を考えると、トータルコストでは家族信託の方が合理的なケースが多いです。

いつまでに対策すべき?

家族信託も任意後見も、本人に判断能力がある段階でしか契約できません。認知症の症状が出始めてからでは手遅れの可能性があります。

タイムリミットの目安

親の状態 家族信託 任意後見契約 銀行代理人届
健康(70代前半まで) ⭕ 可能 ⭕ 可能 ⭕ 可能
軽度の物忘れ △ ケースによる △ ケースによる ⭕ 可能
MCI(軽度認知障害) △ 困難 △ 困難 △ ケースによる
認知症(中度以上) ❌ 不可 ❌ 不可 ❌ 不可
重要

「まだ早い」と思っているうちが唯一の対策チャンスです。親が70代のうちに家族で話し合いを始め、75歳までには具体的な対策を完了させることを強くおすすめします。50代の今こそ、親との会話を始めるタイミングです。

対策を始めるステップ

  1. 現状把握 — 親の財産をリストアップ(預金・不動産・保険・証券)
  2. 家族の話し合い — 兄弟姉妹で方針を共有
  3. 専門家への相談 — 司法書士・弁護士に初回無料相談
  4. 対策の実行 — 家族信託の契約 or 任意後見契約の締結
  5. 銀行の代理人登録 — 並行して各金融機関で手続き

よくある質問(FAQ)

認知症になったら銀行口座は「完全に」使えなくなる?

完全凍結ではありません。年金の振込みや公共料金の自動引き落としは通常継続されます。ただし、窓口での出金・定期預金の解約・振込みは制限されます。日常の少額の出金はATMでできる場合もありますが、キャッシュカードの暗証番号を忘れると再発行できなくなります。

家族が銀行に「認知症です」と言わなければバレない?

銀行の窓口職員は認知症の兆候を見極めるトレーニングを受けています。同じ話を繰り返す、手続きの趣旨を理解できないなどの場合、家族が申告しなくても銀行の判断で取引が制限されることがあります。隠し通すことを前提にするのではなく、事前に対策を講じることが大切です。

家族信託と成年後見は併用できる?

はい、併用可能です。家族信託で財産管理をカバーし、任意後見で身上監護(施設入所の契約や医療同意等)をカバーする組み合わせが理想的です。ただし、両方の費用が発生するため、ご家庭の状況に応じて専門家に相談することをおすすめします。

家族信託は誰に相談すればいい?

家族信託に詳しい司法書士または弁護士に相談するのがベストです。「家族信託 専門」で検索するか、家族信託サービスの無料相談を活用しましょう。初回相談を無料にしている事務所やサービスも多いです。

親に「認知症対策」を切り出すにはどうすれば?

「認知症対策」としてではなく、「相続の準備」「将来の安心のため」という切り口がスムーズです。エンディングノートを一緒に書く、相続セミナーに一緒に参加するなど、自然な流れで話し合いのきっかけを作りましょう。

エンディングノートの書き方ガイドも参考になります。

まとめ

認知症による資産凍結は、親の問題ではなく家族全体の問題です。

  • 65歳以上の約5人に1人が認知症になる時代
  • 銀行口座・不動産が凍結されると、介護費用も施設費用も出せなくなる
  • 対策は「家族信託」「任意後見」「銀行代理人制度」の3つ
  • 不動産がある家庭は家族信託が最も効果的
  • 親が元気なうちにしか対策できない — 50代の今こそ行動のとき

「まだ早い」と思えるうちが、対策のベストタイミングです。まずは家族で話し合いを始め、専門家への無料相談を活用してみてください。

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