成年後見制度とは? 法定後見・任意後見の違いと家族信託との比較

※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。記事内容はすべて筆者の独自調査にもとづいています。

「親が認知症になったら、銀行口座が凍結される」「施設に入れるにも契約ができない」——こうした事態を解決するのが成年後見制度です。

しかし、成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類があり、さらに近年は家族信託という選択肢も注目されています。

この記事では、成年後見制度の仕組みから費用・手続き・家族信託との比較まで、50代のうちに知っておくべき情報を完全解説します。

この記事はこんな方におすすめ
  • 親が認知症と診断され、今すぐ財産管理が必要な方
  • 親が元気なうちに認知症対策を検討したい方
  • 成年後見と家族信託のどちらを選べばいいか迷っている方
  • 成年後見制度の費用やデメリットを知りたい方
目次

成年後見制度とは?

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な方について、家庭裁判所が選んだ「後見人」が本人の代わりに財産管理や契約行為を行う制度です。

主な役割は以下の2つです。

  1. 財産管理 — 預貯金の管理、不動産の管理・処分、税金の申告・納付など
  2. 身上監護 — 介護サービスの契約、施設入所の手続き、医療に関する契約など

特に身上監護ができるのは、家族信託にはない成年後見制度ならではの強みです。

法定後見と任意後見 — 2つの制度を比較

成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。最も大きな違いは「いつ手続きするか」です。

比較項目 法定後見 任意後見
利用タイミング 判断能力が低下した後 元気なうちに契約
後見人の選任 家庭裁判所が選任 本人が自分で選ぶ
後見人の候補 弁護士・司法書士が多い 家族・信頼できる人
裁判所の関与 後見人の選任・監督 任意後見監督人の選任
開始の手続き 家庭裁判所に申立て 公正証書で契約 → 低下後に監督人選任を申立て
費用 月2〜6万円 月1〜3万円+監督人費用
終了 本人の死亡または回復まで 本人の死亡または回復まで
重要なポイント

法定後見は「すでに判断能力が低下した人のための制度」です。元気なうちに備えたい場合は任意後見または家族信託を選ぶ必要があります。

法定後見の3つの類型

法定後見は本人の判断能力の程度に応じて3つの類型に分けられます。

類型 対象者 後見人の権限
後見 判断能力がほとんどない人 すべての法律行為の代理権・取消権
保佐 判断能力が著しく不十分な人 重要な法律行為の同意権・取消権
補助 判断能力が不十分な人 特定の法律行為についての同意権

認知症の場合、多くは「後見」または「保佐」が適用されます。

申立てから開始までの流れ

  1. ステップ1:申立ての準備

    申立人になれるのは、本人・配偶者・4親等内の親族・市区町村長など。医師の診断書、財産目録、親族関係図、申立書を準備します。

  2. ステップ2:家庭裁判所に申立て

    本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出します。

  3. ステップ3:調査・鑑定

    裁判所の調査官が本人と面談。必要に応じて医師による精神鑑定(費用:5〜10万円)が行われます。

  4. ステップ4:審判

    申立てから通常2〜4ヶ月で審判が出ます。後見人が決定し、法務局に登記されます。

  5. ステップ5:後見人の職務開始

    後見人が財産の調査・目録の作成を行い、以後の財産管理と身上監護を担います。

申立てに必要な書類
  • 申立書(家庭裁判所のHPでダウンロード可能)
  • 医師の診断書(成年後見用)
  • 本人の戸籍謄本・住民票
  • 後見人候補者の住民票
  • 本人の財産目録・収支予定表
  • 登記されていないことの証明書

任意後見の仕組みと手続き

任意後見は、本人が元気なうちに「将来、判断能力が低下したときに後見人になってもらう人」を自分で選んで契約しておく制度です。

任意後見の手続き

  1. ステップ1:任意後見人の候補を決める

    信頼できる家族や知人、または専門家(弁護士・司法書士)を選びます。

  2. ステップ2:任意後見契約を公正証書で作成

    公証役場で任意後見契約公正証書を作成します。どのような内容の代理権を与えるかを具体的に定めます。

  3. ステップ3:法務局に登記

    公証人が法務局に任意後見契約の登記を嘱託します。

  4. ステップ4:判断能力低下後、監督人の選任を申立て

    本人の判断能力が低下したら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。監督人が選任された時点で、任意後見人としての職務が始まります。

任意後見の活用ポイント

任意後見は法定後見と違い、後見人を自分で選べるのが最大のメリット。ただし、判断能力が低下するまでは効力が発生しない点に注意。その間の財産管理は「財産管理委任契約」を併せて結んでおくと安心です。

費用の目安と長期シミュレーション

法定後見の費用

費用項目 金額の目安 備考
申立て費用(収入印紙) 3,400円 後見の場合
郵便切手代 3,000〜5,000円 裁判所による
登記手数料 2,600円 収入印紙
医師の鑑定費用 5〜10万円 省略される場合もあり
弁護士・司法書士への依頼費用 10〜20万円 申立て手続きを依頼する場合
後見人への報酬(月額) 月2〜6万円 資産額に応じて裁判所が決定

任意後見の費用

費用項目 金額の目安
公正証書作成費用 1.5〜3万円
弁護士・司法書士への依頼費用 10〜20万円
任意後見人への報酬(月額) 月1〜3万円
任意後見監督人への報酬(月額) 月1〜2万円

長期コストのシミュレーション(8年間)

認知症の平均介護期間は約5〜8年と言われています。8年間利用した場合のコストを比較します。

法定後見(8年)

初期費用:約20万円
報酬:月3万円×96ヶ月
総額:約308万円

任意後見(8年)

初期費用:約15万円
報酬+監督人:月3万円×96ヶ月
総額:約303万円

家族信託

初期費用:約70万円
継続費用:なし
総額:約70万円

※概算値です。資産額や個別の状況により費用は変動します。

成年後見制度の費用面の注意点

成年後見の最大のデメリットは「継続費用が本人の死亡まで発生し続ける」ことです。途中でやめることは原則できません。月3万円の報酬でも10年続けば360万円になります。

メリットとデメリット

成年後見制度のメリット

  1. ① 身上監護ができる

    介護サービスの契約、施設入所の手続き、医療に関する契約など、本人の生活に関する法律行為を代理できます。これは家族信託ではできないことです。

  2. ② 不当な契約から保護できる

    判断能力が低下した後に本人が結んだ不利な契約を取り消すことができます(法定後見の場合)。悪質商法や詐欺から財産を守れます。

  3. ③ 銀行口座の凍結を解除できる

    後見人が選任されれば、凍結された銀行口座から介護費用や生活費を引き出すことができます。

  4. ④ すでに判断能力が低下した場合の唯一の手段

    認知症が進行してしまった後でも利用できるのは法定後見だけです。家族信託や任意後見は、本人に判断能力がないと契約できません。

成年後見制度のデメリット

  1. ① 継続費用が高い

    後見人への報酬が毎月2〜6万円、本人が亡くなるまで発生し続けます。途中で後見を取りやめることは原則できません。

  2. ② 財産管理の自由度が低い

    後見人は財産の「保全」が原則です。株式投資、不動産の建替え、リフォームなど積極的な運用は裁判所の方針により制限されます。

  3. ③ 後見人を家族が選べないことがある

    法定後見では裁判所が後見人を選任します。特に資産が1,000万円以上ある場合は、弁護士・司法書士などの専門家が選任される割合が高くなっています(全体の約80%)。

  4. ④ 不動産の売却に裁判所の許可が必要

    居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です。手続きに時間がかかり、必ずしも許可されるとは限りません。

家族信託との徹底比較 — どちらを選ぶべき?

近年注目されている家族信託は、成年後見制度とは異なるアプローチで認知症対策を行う仕組みです。両者の違いを詳しく比較します。

比較項目 成年後見(法定) 成年後見(任意) 家族信託
利用タイミング 判断能力低下後 元気なうちに契約、低下後に発効 元気なうちに契約、即日効力発生
財産管理の柔軟性 ❌ 低い(保全が原則) △ やや制限あり ⭕ 高い(自由設計)
身上監護 ⭕ 可能 ⭕ 可能 ❌ 不可
不動産の売却 △ 裁判所の許可が必要 △ 監督人の同意が必要 ⭕ 受託者の判断で可能
裁判所の関与 あり(選任・監督) あり(監督人選任) なし
初期費用 15〜30万円 10〜20万円 50〜100万円
継続費用(月額) 月2〜6万円 月2〜5万円 原則なし
8年間の総コスト 約210〜600万円 約200〜500万円 約50〜100万円
不利な契約の取消し ⭕ 可能 ❌ 不可 ❌ 不可
遺言の代用 ❌ 不可 ❌ 不可 ⭕ 可能(受益者連続型)

家族信託の仕組み・費用の詳しい解説はこちら

ケース別おすすめ — あなたの家庭に最適なのは?

ケース1:すでに認知症が進行している

法定後見一択です。判断能力がすでに低下している場合、家族信託も任意後見も契約できません。すぐに家庭裁判所に申立てましょう。

ケース2:親は元気だが、不動産がある

家族信託がおすすめ。不動産の売却・建替え・賃貸が受託者の判断で可能です。裁判所の許可も不要で柔軟に対応できます。

ケース3:施設入所の契約や介護サービスの手配が心配

任意後見 + 家族信託の併用が理想。家族信託で財産管理をカバーし、任意後見で身上監護をカバーする組み合わせが最も手厚い対策です。

ケース4:費用をなるべく抑えたい

家族信託。初期費用は高いですが、継続費用がかからないため、長期的にはコストが大幅に安くなります。成年後見は毎月の報酬が発生し続けます。

まずは専門家に無料相談

成年後見と家族信託のどちらが最適かは、ご家庭の状況(資産の内容・親の状態・家族構成)によって異なります。まずは家族信託や成年後見に詳しい専門家の無料相談を利用して、ご家庭に合ったプランの提案を受けてみましょう。

よくある質問(FAQ)

法定後見で家族が後見人になれる?

申立て時に家族を後見人候補者として記載できますが、最終的には裁判所が判断します。特に管理する資産が1,000万円以上ある場合は、弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任される割合が約80%と高くなっています。家族を後見人にしたい場合は、任意後見制度を活用する方が確実です。

成年後見を途中でやめることはできる?

原則としてできません。法定後見は本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続きます。「費用が高い」「管理が面倒」という理由での中止は認められません。これが成年後見制度の最大のデメリットの一つです。開始する前に、長期コストをしっかり計算しておくことが重要です。

任意後見と家族信託は併用できる?

はい、併用可能で、むしろ推奨されるケースもあります。家族信託で財産管理(預金・不動産)をカバーし、任意後見で身上監護(施設入所の契約・介護サービスの手配等)をカバーする組み合わせが理想的です。ただし、両方の費用が発生するため、資産規模に応じて判断しましょう。

成年後見人に不満がある場合、交代させることはできる?

裁判所に後見人の解任を申し立てることは可能です。ただし、「不正な行為」「著しい不行跡」「その他後見の任務に適しない事由」がある場合に限られます。「相性が合わない」「報酬が高い」という理由では解任は認められないのが実情です。

認知症の親の介護費用を、親の預金から出すにはどうすればいい?

すでに認知症が進行して口座が凍結された場合は、法定後見の申立てが必要です。後見人が選任されれば、介護費用の支出が可能になります。ただし申立てから選任まで2〜4ヶ月かかるため、その間は家族が立て替える必要があります。こうした事態を防ぐためにも、親が元気なうちに家族信託や任意後見で備えておくことを強くおすすめします。

認知症による資産凍結の詳しい解説はこちら

まとめ

成年後見制度は認知症になった方の財産と生活を守る重要な制度です。しかし、費用面・自由度の面で制約も大きいため、家族信託との比較検討が不可欠です。

  • すでに認知症が進行 → 法定後見(唯一の選択肢)
  • 元気なうちに備える → 家族信託が最もコスパが良い
  • 身上監護も必要 → 任意後見 + 家族信託の併用が理想
  • 成年後見は途中でやめられない — 開始前に長期コストを把握すべき
  • 親が70代のうちに、家族で話し合いを始めることが最も大切

「まだ早い」と思えるうちが対策のベストタイミングです。まずは専門家の無料相談を活用し、ご家庭に最適な認知症対策を見つけてください。

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